近年のAI化の流れは、会計業務にも浸透しつつあります。
その代表的なものはfreeeやマネーフォワード等のクラウド会計の普及です。
クラウド会計ソフトや(インストール型のソフトであっても)クラウドツールを活用することは、預金の自動読み込みやデータの共有化を行うことができること等業務の効率化に非常に役立ちます。
しかし、クラウド会計を導入すると、全自動で決算書を作ってくれると勘違いしている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。(たとえ預金の自動読み込みや請求書作成業務と会計ソフトが連動していたとしても、現状完璧な決算書を作成することは難しいです。)
今回は、(税理士に依頼せず)自分で決算書を作成する際に、特に要チェックすべき項目について解説していきます。
現金預金
・決算期末の通帳残高や実際の手許現金と会計ソフトの残高は一致しているか。
・現金残高はマイナスになっていないか。
預金の自動読み込みを利用している場合、残高がずれるケースは少ないかもしれませんが、必ず通帳等で期末の残高を確認し、会計ソフト上の現金預金残高と一致しているかを確認しましょう。
また、現金に関して、期中マイナス残高の時があると、税務調査の際、「正規の簿記の原則に従っていない」として、最悪の場合青色申告の取り消しをされてしまうことがあります。
(特に会計ソフトの残高=現金残高としている場合)そのようなことになっていないか必ず確認しましょう。
売掛債権
・売掛帳や手形帳の期末残高と会計ソフトの残高は一致しているか
・(月末が決算の企業で請求書の締めは月末以外である場合)帳端の計上はできているか
・貸倒引当金は法定繰入率によって計上されているか
例え期中現金の入金時に売上計上していたとしても、決算時は発生主義に直さなければなりません。納品書や請求書等を確認して、納品等は完了しているが期末において未回収の売掛債権について、漏れなく売上計上し、残高を合わせる必要があります。
また、得意先によっては、請求書の締めが15日や20日等月末になっていないところがある場合、翌月分の請求書等で帳端を計上する必要があります。
棚卸資産
・原材料や商品は実地棚卸に基づく棚卸表に従った金額を計上しているか
・他の業者に対する預け在庫はないか
・(製造業や建設業等の場合)未だ売上計上されていない部分の原価を仕掛品や未成工事支出金等に含めているか
原材料や商品を購入したとしても、そのすべてが当期の損金になるとは限りません。
まだ売上計上されていない棚卸資産については、期末に実地棚卸を行い、資産計上する必要があります。
また、まだ売れていない製造過程の半製品については、一定の配賦計算に基づき仕掛品計上する必要があります。建設業や不動産販売業等個別で現場やプロジェクト管理できるものについては、未販売の現場やプロジェクトに係る経費を棚卸計上することになります。
固定資産
・期中取得した固定資産が(車両費や消耗品費等)一時の経費となっていないか。
・減価償却費計上後の固定資産の簿価は適正か。
10万円を超える固定資産を取得した場合は、原則として固定資産に計上し、減価償却費として毎期一定額を経費にしていく必要があります。(青色申告の適用がある一定の企業については年300万円まで一時の損金とできますが、その場合も決算書や別表に一定の記載をする必要があります。)
例えば100万円の車を買った場合、「車両費」として経費に計上するのではなく、「車両運搬具」として固定資産に計上した後、減価償却費として経費に計上していく必要があるわけです。
減価償却費については、(自身が選択している)法定償却方法と(固定資産の種類ごとに定められている)法定耐用年数を確認したうえで適正額を計上する必要があります。
投資その他の資産
・保証料は「長期前払費用」等として資産計上し、期間に応じて償却されているか
・有価証券やその他の資産の計上額は適正か
・(仮払金等の)仮勘定の精査は行われたか
・(法人の場合で役員等に対して)貸付金が計上されている場合利息の計上は適正に行ったか
・生命保険の支払について保険積立金の処理の確認は行ったか
保証協会付融資の場合、信用保証協会に保証料の支払いをすることになりますが、当該保証料についても固定資産と同様に期間の経過に応じて経費計上していくことになります。
また、法人の行う事業活動は営利を目的とするものとされるので、法人が誰かに金銭等の貸付を行った場合には、原則として受取利息を計上する必要があります。
その他、法人が保険料の支払いをする場合、全額損金計上するのではなく、基本通達に従って一定額を資産計上する必要がある場合があります。必ず保険会社に確認するようにしましょう。
買掛金・未払金
・買掛帳や手形帳の期末残高と会計ソフトの残高は一致しているか
・(月末が決算の企業で請求書の締めは月末以外である場合)帳端の計上はできているか
・社会保険料等についても未払計上を行っているか
買掛金や未払金等についても、売掛債権と同様に発生主義にて計上することになります。
未払の計上が漏れてしまうと、利益が過大に計上されることになるので、余分な税金を納めてしまうことになるので注意する必要があります。
前受金
・期中入金されているが翌期に役務提供が行われるものについては前受金勘定に計上したか
(例えば)期中に1年分お金を受け取っているが、翌期に対応するものがある場合等、入金額に翌期分が含まれている場合、当該翌期分については前受金勘定に計上する必要があります。
預り金
・給与から天引きしている源泉所得税や市県民税で未納付の額と決算書の金額は一致しているか
源泉所得税や市県民税について、原則としては従業員から徴収した月の翌月10日までに税務署や市役所等に納付する必要があります。しかし、常時勤務する従業員が10人未満であること等一定の要件を満たせば、源泉所得税や市県民税について納期の特例として半年分をまとめて納付することも認められます。(源泉所得税と市県民税で納期限は違いますが)
納付する方法によって、決算期末現在で未納付となっている理論値と決算書上の金額とが一致しているかを確認しなければなりません。(例えば毎月翌月10日に納付している場合には1月分、決算時に半年分未納付になっている場合には半年分預り金として残っているかを確認する)
借入金
・金融機関からの偏在予定表等の期末残高と決算書の金額は一致しているか
金融機関から借り入れを行っている場合、返済予定表が発行されます。
当該返済予定表の残高と決算書の金額は一致しているかを確認する必要があります。
上記以外にも注意する点はありますが、間違えやすかったり、特に注意しなければならない項目について解説しました。
次回は損益計算書での注意項目について解説していきます。
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